これはいつものことなんだけど、この文章を書くのは、楽しみでもあり大きな苦しみでもある。ヘタな文章に毎回深く落ち込んでしまうというのもあるが、いちばん残念なのは、「ほんとうに伝えたいこと、いちばん伝えたいこと」に、文字がなかなか追いついてこないことだ。自分自身のことでいえば、ひとの話を「聞く」のが好き。ひとのことばを「耳で聞く」話は、ほんとうにこころに響く。用意された万人のためのプレスリリースのようなものよりも、クリエイションに関わったひとたちからの、生きたことば＿＿こだわりや展望、ヒントやアドバイスを大切にしたい、といつも思っている。今回着たCO(コー）のドレスように、“ニュアンスがかたちになったようなもの”を文章で表現しようと思うとき、キーボード上で指が止まってしまったまま・・・というのはよくあること。伝えたいことはたくさんあるというのに。

テクノロジーの発展が頂点に在るいま、液晶画面から溢れてくるものは、まぎれもない事実ではある。それでもまだ、それらがわたしたちが本当に伝えたいこと、届けたいことすべて、とは全然いえないのは歯がゆいと同時に喜ぶべきことでもある。「ひと」のできることがまだまだあると思えるから。そして、わたしがことばと同じくらい大切に思っているのは「体験」である。有名インフルエンサーの誰かじゃなく、着たひと自身が、あなた自身がどう感じるか。そこから始まる新しいストーリーのおもしろさは、いったい何にたとえたらいいのだろう。